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公取委ガイドライン

公正取引委員会は、1991年の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(以下、「ガイドライン」)の中の「流通業者に販売地域に関する制限」(第2部・第二・3)において、一般的な考え方を示している。そこでは厳格な地域制限を、「メーカーが流通業者に対して、一定の地域を割り当て、地域外の販売を制限すること」と定義した上で、「市場における有力なメーカーが流通業者に対して厳格な地域制限を行い、これによって当該商品の価格が維持されるおそれがある場合」には、拘束条件付取引(一般指定13項)に該当し違法となるとする。
メーカーが「有力」であるかどうかの判断については、「当該市場におけるシェアが10%以上、又はその順位が上位3位以内であることが一応の目安となる」とし、「ただし、この目安を越えたのみで、その事業者の行為が違法とされるものではなく、当該行為によって『当該商品の価格が維持されるおそれがある場合』に違法となる。市場におけるシェアが10%未満であり、かつ、その順位が上位4位以下である下位事業者や新規参入者が厳格な地域制限を行う場合には、通常、当該商品の価格が維持されるおそれはなく、違法とはならない」とする。
その上で、「当該商品の価格が維持されるおそれがある場合」に当たるかどうかは、①対象商品をめぐるブランド間競争の状況(市場集中度、商品特性、製品差別かの程度、流通経路、新規参入の難易性など)、②台商品のブランド内競争の状況(価格のバラツキ状況、当該商品を取り扱っている流通業者の業態など)、③制限の対象となる流通業者の数及び市場における地位、④当該制限が流通業者の事業活動に及ばす影響(制限の程度・態様など)、を総合的に考慮して判断し、例えば、市場が寡占的であったり、ブランドごとの製品差別化が進んでいて、ブランド間競争が十分に機能しにくい状況の下で、市場における有力なメーカーによって厳格な地域制限が行われると、当該ブランドの商品をめぐる価格競争が阻害され、当該商品の価格が維持されるおそれが生じることとなる、とする。
ガイドラインでの考慮事項は非常に広範であるが、同一ブランド商品の価格が維持されるおそれ(以下、「価格維持効果」)によって公正競争阻害性(違法性)の有無が判断される。ブランド間競争の状況は、あくまで、同一ブランド商品の価格が維持されるおそれが生じるかを判断する際の考慮事項に過ぎない。また、垂直的販売地域の制限が、流通業者の販売努力を促しブランド間競争を促進する可能性がある点は、ガイドラインでは重視されていない。
これとは対照的に、「流通業者の競争品の取り扱いに関する制限」(2部・第二・2)については、市場における有力なメーカーが競争品の取り扱い制限を行い、これによって新規参入者や既存の競争者にとって代替的な流通経路を容易に確保することができなくなるおそれがある場合には違法となるとされており、ブランド間競争のもつ競争促進効果が重視されている。
ガイドラインでは、ブランド内の価格維持効果を違法性判断基準としていることから、ブランド間の同調的、協調的な価格維持効果については考慮していない。したがって、例えば、当該市場におけるシェアが15%で順位が3位のメーカーが、自己のブランド商品について厳格な地域制限を実施し、当該商品について価格維持効果が認められる場合には、それだけでガイドライン上は違法となり得る。
しかし、流通業者は、割り当てられたテリトリーにおいて、自己のブランド商品については独占的供給者になるのであり、少なくともテリトリー内では価格維持のおそれは当然に生じる。他方で、価格維持効果について、「おそれ」という文言にかかわらず、複数のテリトリーに存在する流通業者の販売価格がほとんど同一であるといった高いレベルまで求めるならば、実際には再販売価格拘束(一般指定12項)が併せて実施されている場合にのみ違法という判断になりかねない。そうすると、厳格な地域制限をめぐる問題も、その独自な検証が不要となり、結局のところ再販売価格拘束の問題に収斂されてしまう可能性もある。

1 コメント:

comment test

2011年1月8日 19:51  

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