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本件は、司法省反トラスト部により北イリノイ連邦地裁に差止命令を求めて起訴された事件である。違法被疑事実は、シカゴに本社を置く自転車製造業者であるシュウインが、その製品の販売に関し、(1)公正取引法(再販売価格維持に対する適用除外法)のない州において再販売価格維持を行い、(2)各卸売業者とそれぞれ一手販売権を持つ一定の地域を設定するとともに地域外への販売を禁止する契約を結び、かつ(3) 卸売業者と小売業者に同社がフランチャイズ契約を結んだ小売業者にのみ卸売するよう約束させており、これらの行為は、シャーマン法一条違反するというものであった。
これらの被疑事実に対する同地裁の判決は、(1)再販売価格維持に関しては、これを証明するに足る証拠がなく、(2) 卸売業者に販売地域の制限については、彼の団体であるシュウイン自転車卸売商協会(Schwinn Cycle Distributors Association)の同意を得て実施されている等の事実に徴し、実質的には卸売業者間の水平的協定であるとみられて、それ故に当然違法であるとしたが、(3) シュウインが、販売業者の卸売の相手方をフランチャイジーである小売業者に限定していることについては、これは顧客選択の自由を制限する当然違法の行為であるという政府の主張を斥け、合理の原則の立場から適法と判断した。すなわち裁判所は、シュウインが他の巨大な自転車メーカーであるSears RoebackMont Gomeryなどに比較して小規模であり、これらの競争者の直営小売店と対抗するためには、小売業者をして同社の販売方針に従った販売活動を行わせ、かつ顧客に対し所要のサービスを提供させるために、小売業者のフランチャイズ制を採用したもので、そのためには卸売業者に販売先をフランチャイジーに限定する必要があるという同社の主張に合理的理由があると認めたのである。
この判決に対し、政府は、再販売価格維持に関する部分を除き、連邦最高裁に跳躍上告を行った。上告審において、政府は、シュウインが卸売業者の販売地域を制限していること、及び卸売業者と小売業者に同社のフランチャイジーである小売業者にのみ卸売するよう要求していることは、いずれも当然違法とされるべきであると主張した。
これに対し、最高裁は、シュウインと卸売業者との取引方法のうちの販売(買取り)と非販売(販売委託)とを区別して違法性を評価した。すなわち判決は、販売によって商品の所有権が卸売業者に移転した場合には、この商品の再販売に関する地域や顧客の制限は、当然違法となるけれども、販売業務を委託し、商品の所有権が委託者であるシュウインに留保され、かつその商品販売に関する損失の危険をも同社が負担している場合には、これらの制限が違法であるかどうか合理の原則によって判断されるという解釈論に立って、本件行為に関しては、販売分に対するシュウインの卸売業者の地域と顧客の制限は当然違法であるとする一方、非販売分に対するこれらの制限は、次のような諸点にかんがみ合理の原則に照らして適法であるという結論に導いた。
(1)他に価格維持その他の反競争的行為がないこと。
(2)シュウインの卸売業者と小売業者は、他のブランドの自転車を自由に取り扱うことが出来ること。
(3)他の一般の卸売業者と小売業者も、シュウインの競争者の製品を入手し得ること。
(4)本件の販売方法は、競争がこれを必要とさせたものであり、かつ競争に対処するために必要な程度を超えておらず、その効果は、自転車市場における競争を守るものであって破壊するものでないこと。
(5) シュウインが小売業者のフランチャイズ制をしき、これらの者に限って小売を行わせていることは、それ自体としては不当な取引制限にならないこと。
裁判所は、製造業者が所有権を失った製品の処分に対する拘束には当然違法の原則を、所有権を実質的に保留している製品の処分に対する拘束には合理の原則を、それぞれ適用するという接近方法を立てることによって、この二つの違法基準にそれぞれ処分を与えようとしたのである。この点に関して、判決は、次のように述べている。
「シャーマン法の下では、製造業者が製品の所有権を喪失したのちにその商品の取引される地域又は人を制限し限定しようとはかることは、それだけで不当である。(略)かかる制限は、明らかに競争に対して破壊的であるので、その行為が存在しさえすれば、(違法となすに)十分である。」
「製造業者が製品に関する所有権と危険負担を保持しつづけ、かつ問題となっている販売業者の地位と機能が事実上製造業者に代理人又は販売従業員のそれと区別しがたい場合には、合理の原則が作用するのである。」
「製造業者が製品の所有権を留保しながら製品がそれを通じて公衆に配分されるべき機関として特定の卸売業者また小売業者を選ぶ場合を含めて、全ての垂直的地域制限とフランチャイズ制を禁止するように当然違法の原則が適用されるような非弾力的解釈にはしることは避けたいと考える。(略)しかし、製造業者は製品対する所有権を手放した後にかかる自由を許容することは、所有権譲渡す後の拘束を否定する以前の原則を破ることとなり、かつ法の許容限度を越えて販路の排他的設定と地域制限に扉を開くことになろう。」
「シュウインがフランチャイズ式の小売店制度を設け、同社の製品の小売を彼らに限定したことは、危険負担を含めて所有権の存在を識別するための全ての徴表を同社が保有する限り、また問題の販売業者らが機能的に代理店または販売員と同様で区別しがたいと認められる限り、不当な取引制限を構成すると結論することはできない。」
シュウイン判決以後、業界では、自己の所有権を失った商品野販売に関し、製造業者が販売業者に地域又は顧客を制限する義務を課すことは、全て当然違法であると解せられるようになった。しかし、この判決は、裁判所の間では、しばしば誤った判決と考えられ、その後の下級審判決において、垂直的地域・顧客制限に対し当然違法の原則の適用の例外を認めるものが、いくつ出現し、やがて後のシルベニア事件において最高裁も、シュウイン判決に解釈を前面的に修正して合理の原則の採用に転ずるという経過をたどるのである。

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